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以下、続きに格納。
長い長い、何か夢を見ていた様だ。
妙にリアルで。
それは切なくもあり、暖かくもあり。
そして、大切だった“何か”であり……――。
横たわる少女は、霞む視界が段々と鮮明になると、そこが“何処”なのか、一瞬分からなかった。
視界に入ったそこは、少女が生まれてから住んでいる家の天井のそれだというのに……。
しかし、ようやく思い出した。
窓辺は若草色のカーテンに、テーブルにはカモミールやアップルミントを生けたジャムの空き瓶。
1つしかない本棚には、薬草や医学の本に、彼女が密かに憧れる、恋愛小説。
ベッド脇には、ウサギや猫のぬいぐるみ。
――紛れもなく、自分が長年使っている部屋だった。
「……何だか、長い夢を見てた気がしましたの。
何処かの島みたいな所で、沢山の人と出会って、色々な事があって……。
でも、段々その内容も、薄れ掛けて……わたしは、どんな夢を……?」
時折、不思議な夢を見る事があった。
今日もまた、その夢を見た気がした。
ぼんやりしながら呟くリゼットの部屋の窓の下から、聞きなれた少女の声が聞こえる。
「リゼぇー!」
「……ミゼアちゃん?」
寝巻きのまま、窓の方へ行くと、下には従姉妹のミゼアとアンジーの2人が居て、先ほどの少女が手を振っていた。
「リゼ、遅ぉ~い!!一体何時だと思ってるのーっ!
今日は夏至のお祭りでしょ?!
言いだしっぺは、アンタなんだかんねーッ!」
「……ミゼねぇ、朝っぱらから煩いわ」
ミゼアの隣に居た妹のアンジーが、欠伸を堪えながら、不機嫌そうにミゼアを睨む。
――そう、今日は夏至祭だった。
夏至――1年で1番昼間が長く、夜が短い日。
この日の日差しは、最も太陽のエネルギーに満ち溢れ、また、この日に降る雨の雫は、最も生命力をもたらすという言い伝えがある。
そして、この日収穫出来るセントジョーンズワートは、特に治癒力が高いとされ、毎年この日、薬草魔女のクレイモールド家では、収穫に追われるのだった。
……が、今年からは更に忙しい。
今年から、若き魔女・リゼットの発案で、麓の村との親睦を深める為に、麓の村人たちを誘い、キャンドルを囲んで、里の郷土料理であるハーブ料理を振る舞うのだった。
最初は長老や古い魔女たちから、しきたりが薄れる事で、反対の声が上がったが、リゼットたち若手の魔女を始め、彼女らの師・ガーナやその友人らも面白そうだと一口乗り、先代の《大地の魔女》でもあり、リゼットの祖母・リーファまでもが、
「これからは、彼女たちの時代……自分たちの思い描く様にやってみなさい。
……但し、準備も片付けも、自分たちで全てやる事。
それが、王都時代より昔から変わらず受け継いだ、“生活の術に長けた女性”の敬称として謳われる“魔女”なのだからね」
との声で、折れるしかなかった。
その言葉に、若い魔女たちは歓喜し、手を取って喜び合う。
長年閉鎖的に暮らしていた“魔女の隠れ里”は、少しずつ、その姿を変えようと、内部から変わっていった。
問題は里の中だけではない。
寧ろ、外側の方が問題だろう。
麓の1番近い村で、密かに里と交流があっても、それはまだ村人の極1部しか居ず、村人で年が上の者程、里に対して根深い偏見も残っている。
里の使者役のミゼア曰く、ハーブ料理を振舞うと言っただけで、料理に呪いを掛けるんじゃないかと震える村人も少なくなかったそうだ。
元々、密かに交流があった者や、里や魔女に興味がある者、純粋に楽しそうと思った者も居て、何人かは集まるらしいが、矢張り殆どが年若い者で、里と同様、高齢者は眉を顰めて話を聞いていた。
実際は、女性差別や魔女狩りといった時代、社会的地位の弱かった“女子供の為の駆け込み寺”的な存在でひっそり出来た里だったのだが、たまたま強い魔力を備わってしまった者や、医者や巫女をしていた一族などまでも迫害対象に当たり、そこに逃げ込んだのが始まりだった。
だが、最初はそんなもんだろう……寧ろ数人集まるだけでも御の字だという事を、発案者であるリゼットは思った。
リゼットは、平和なこの里を変えたかった。
平和ではあったが、しきたり・掟・理――そういったものに守られての“平和”に、ある日疑問を感じていたから。
それは、おぼろげに何度か見た“夢”が、彼女を変えたのかも知れない。
夢の中で出逢った人たちが、本当に様々で、中には彼女の里でいう《理》を侵す、禁忌的な存在も、居た様な気がした。
「もう、自分でこんなナイスな事を発案しておいて、忘れるなんて……」
「あ、そっか……先日、そんな事を言った気がしましたの。
……いつの間に、そんな時期になってしまったんですのね。
もう何年も、里にすら戻ってなかった様な、変な感覚がするのに……」
その時、胸の奥が、何故かツキンと痛む。
「(……何かしら?)」
胸の奥に、拭いきれぬ違和感を感じる。
その理由が何故かは、彼女も分からないが、以前も感じた事のある、切ない感覚に近く……。
しかし、それに触れると、涙が込み上げてしまう気がして、怖くて触れれなかった。
「リゼぇ~!」
「い……っ、今、行きますのっ!!」
感傷に浸る間もなく、彼女は慌てて洋服に着替え、ウェーブのある髪の毛を手早く三つ編みにして、部屋を出る。
外では既に、ミゼアとアンジーが待っていた。
アンジーは朝が弱いせいか、木陰で転寝モードだが、ミゼアは別の木に登り下りしていた。
「おっそいおっそーいっ!」
「あ、朝から元気すぎますの……」
「どーせリゼったら、また夢の中で、来もしない赤いマフラーの男性と、デートでもしてたんでしょ?
そんなの夢見るくらいなら、いい加減男性恐怖症、治しなよ」
今朝はどんな夢を見たかは覚えていないが、リゼットはその言葉で、何かを思い出した。
――そう、夢の中には、確かに男性が出てた気がした。
よくは覚えていないが、夢の中では男性恐怖症も、少し治ってた気がした……。
あれは一体、誰だったのだろう……?
赤いマフラーをなびかせた、黒髪の男性。
優しい声で、自分の名前を呼ぶ声。
その声からして、優しい笑顔を向けてくれる人物な気はした。
それがひどく懐かしく、忘れたくない衝動に駆られるのに、顔が見えない……思い出せないのかも知れない。
「……さては、図星だなー?ボーっとしてるし!」
ぼんやりとしているリゼットの頬を、ミゼアが指で突っつく。
「う……うるさいですの!わ、わたしだって、その気になれば……」
「ふっふーん?……恋愛は、リゼットの好きな恋愛小説のように、上手く行かないよ?
じゃあ、今日の夏至祭で、どっちが先に彼氏をゲットするか、競争だかんねっ♪」
「……そ、そんな勝手な事、言わないで下さいですのっ!!」
「……アホらし。それより麓の村まで夜道を歩くなんて、面倒臭い事考えた魔女は、何処の誰かしらね……」
赤くなるリゼットをからかうミゼアに、その様子を呆れて見るアンジー。
そう――それは“いつも通り”の、里の光景。
彼女の奥底で、“偽りの島での記憶”は、眠り続ける。
まるで森の奥深くに眠る、何かを秘めた、宝物のように。
それは夏至の夜の短さの様に、幻だったのか、現実だったのか。
それが再び目覚めるかは、誰にも分からない。
もしかしたら、一生目覚める事なく、生涯を終えるのかも知れないが、その方が良いのかも知れない。
もしかしたら、何かのキッカケで、その記憶が戻るのかも知れないが、それがいつ来るのかは分からない。
どちらにしても言えるのは、まだ年若い彼女の物語は、始まったばかりだろうという事だった――。
*END?*
以上は、散乱したメモの中から出てきた“エピロールもどき”でした(…)。
「おれたちの ぼうけんは これからだ!」的な(笑)。
勿論これは、正式エピローグではなく、アナザーエンド?ノーマルエンド?くらいの位置付けです。
これ書いたの、2期終了発表前くらいで、「やっぱり駄目でした」のショック緩和(?)で先に書いておいたら、本当に終了になって、そのままメモの中に忘れられていた記憶があります。
適当に書き殴ったもので、まんま載せてます。
面倒だから修正しないむー∈(・ω・)∋
本当のエンドは、後日投下予定です。
それより本日、新規登録開始予定……?
久々に仕事が早く終わったので、寄り道せず、TVを楽しみな子供のように喜び勇んで帰宅してしまいました(…)。
開始楽しみ……!
3期は島の隅で遊んでいると思います∈(・ω・)∋